ギタリストなら「歪みの音」にこだわりを持っている人は多いのではないでしょうか。
ただ、オーバードライブとディストーションの違いがよくわからなかったり、様々なメーカーから販売されていて選択肢が広く自分の求めている理想のサウンドはあるものの選び方に悩むことも多いかと思います。
そこで今回は、ギターエフェクターのディストーションについて解説しておき、人気機種や定番機種などを厳選してご紹介していきます。
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目次
ギターエフェクターのディストーションとは
ギターの「ディストーション(Distortion)」とは、広義には歪んだ音色そのものを指しますが、狭義では意図的にその音色を得るためのエフェクターや機器のうちの一分類を指します。
ディストーションという名前が登場したのは1970年代後期に発売された「MXRのM104 Distortion+」がはじまりです。
BOSSもOD-1 overdriveを発売した翌年の1978年に「BOSSのDS-1 Distortion」を発売していることから、歴史的にはオーバードライブもディストーションも同じ年代に開発されています。
オーバードライブよりもさらに激しく歪ませたサウンドが特徴のディストーションは、コードストロークやアルペジオなどコードの分離感を求められる和音中心の繊細なプレイには不向きとされています。
しかし、パワーコードやリフ、ギターソロなどをよりパワフルに演奏したい時に活躍する歪みペダルであり、ポップスやロックはもちろん、ハードロック・ヘヴィメタル・パンク・オルタナティブロックなど、ロックから派生した様々なジャンルで使用されるエフェクターです。
ギターエフェクターのディストーションの仕組み
ギターの音が歪む仕組みは音の波形と関係があります。
音の波形は「音の波が大きければ大きい音」「細かければ高い音」になりますが、この音の波形の上下の部分が本来の増幅値より越えた部分が「潰れた」状態になり「歪み」になります。
アンプは大きな音を出していくうちに真空管に負荷がかかり、本来の増幅値より超えた部分が自然と歪んでいきますが、エフェクターでは「クリッピング回路」という歪ませる回路で再現しています。
音が潰れるということは「コンプレッサー(圧縮)」がかかっている状態とも言えますし、歪みの量が増えるということは「ダイナミクスレンジ」が狭くなるとも言えますので、歪ませすぎには注意しましょう。
ディストーションとオーバードライブの違い
本来の言葉の意味は、ギターアンプに過大入力を与えて回路の限界値を超えて出力音が潰れてしまった状態のことを「オーバードライブ(状態)」、出力された「歪んだ音」を「ディストーション(音)」です。
また、BOSSのエフェクターを例に挙げると「非反転増幅回路を形成するオペアンプの出力側にクリッピングのダイオードを挿入しているものには『ディストーション』の名称」が、「オペアンプの帰還回路にクリッピングのダイオードを挿入しているものには『オーバードライブ』の名称」が用いられている傾向にあります。
楽器演奏者やエフェクターメーカー等の業界では、ディストーションはオーバードライブに比べてより荒々しく硬質で深い歪みを得るもの、という認識が一般化しています。
ギターエフェクターのディストーションのつまみの意味と設定方法
ディストーションはエフェクターによってはつまみがたくさんある機種もありますが、基本的には「LEVEL・TONE・GAIN」の3つがあります。
「LEVEL(レベル)」のつまみの意味と設定方法
ディストーションの「LEVEL(レベル)」は音量を調節をするためのつまみですが、「volume(ボリューム)」と書かれている場合もあります。
つまみを右に回せば音量が上がり、左に回せば音量が下がります。
「TONE(トーン)」のつまみの意味と設定方法
ディストーションの「TONE(トーン)」は音色を調整をするためのつまみですが、「TREBLE(トレブル)、MIDDLE(ミドル)、BASS(ベース)」と分かれている場合もあります。
TONEは基本的に「ローパスフィルター」の役割になっており、ツマミを右に回せば音が明るく鋭い音になり、左に回せば音が暗く丸みのある音になります。
また、「TREBLE(トレブル)、MIDDLE(ミドル)、BASS(ベース)」は基本的には「TREBLE(トレブル)=高音域」「MIDDLE(ミドル)=中音域」「BASS(ベース)=低音域」の役割となっています。
各つまみを右に回せば特定の周波数帯をブースト、左に回せば特定の周波数帯をカットすることができますので、より繊細な音作りができます。
「GAIN(ゲイン)」のつまみの意味と設定方法
ディストーションの「GAIN(ゲイン)」は歪み具合を調節をするためのつまみですが、「Drive(ドライブ)」や「Boost(ブースト)」と書かれている場合もあります。
つまみを右に回せば歪みの量が増し、左に回せば歪みの量が減ります。
ギターエフェクターのディストーションの使い方
ディストーションはメインの歪みとして使用されることが多いエフェクターです。
ギタリストによっては目的に合わせてディストーションの使い方はいくつかあるため、代表的な使い方をご紹介していきます。
ディストーションをメインの歪みとして使用する使い方
ディストーションをメインの歪みとして単体で使用する場合です。
また、アンプ側はクリーンに設定して歪み系エフェクターを2台用意しておき、メインの歪みサウンドを切り替えて使用する使い方もあります。
2台の歪み系エフェクターを用意する場合はオーバードライブで軽い歪みの音作り、ディストーションで深い歪みの音作りをすることが定番ですが、「浅い歪み→深い歪み」という順番で繋ぎ方が多いです。
歪みの質感を変えることサウンドバリエーションを増やし、多様なシーンに対応できるようになります。
ディストーションをゲインブースターとして使用する使い方
ディストーションをゲインブースターとして使用する使い方の場合は、ディストーションの繋ぎ方をメインの歪みの前になるように「ディストーション→メインの歪み」という順番でセッティングしておきます。
ディストーションの設定はゲインを控えめにしてボリュームを上げることでギターの信号を増幅させることができ、メインの歪みに送るゲインを上げることで歪みの量を増やすことができます。
ゲインブースターとしてはオーバードライブやクリーンブースターを使用することが定番ですが、ディストーションペダルでも同様の使い方ができます。
ディストーションをボリュームブースターとして使用する使い方
ディストーションをボリュームブースターとして使用する使い方の場合は、ディストーションの繋ぎ方をメインの歪みの後になるように「メインの歪み→ディストーション」という順番でセッティングしておきます。
ディストーションの設定はゲインを控えめにして求めているボリュームになるまで上げることで音量を増幅させることができ、メインの歪みの音量を上げることができます。
ボリュームブースターとしてはオーバードライブやクリーンブースターを使用することが定番ですが、ディストーションペダルでも同様の使い方ができます。
ギターエフェクターのディストーションのおすすめ
ギターエフェクターのディストーションのなかでも人気のある機種や定番とされている機種、名機などを厳選してご紹介していきます。
BOSS DS-1 Distortion
世界的エフェクターブランドであるBOSSが1978年にディストーションペダル第1号機として発売された「BOSS DS-1 Distortion」です。
BOSSエフェクターの原点であり、甘くマイルドなソフトディストーションから高域のエッジが立ったハードな歪みまで幅広く対応している王道のサウンドです。
1987年に登場した「DS-2」は「DS-1」譲りのオーソドックスなディストーションと超過激なディストーションの2モードを搭載したターボ仕様のモデルになっています。
BOSS MT-2 Metal Zone
1991年に登場して以来、BOSS製品トップクラスの知名度と人気を誇る人気ハイゲインディストーションペダルである「BOSS MT-2 Metal Zone」です。
個性的なサウンドキャラクターを持ちながら、3バンドイコライザーにより中域のブースト/カットする周波数帯域を調節することができため、幅広い音作りに対応することができます。
クリーントーンのアンプに単体で繋いでもかなり歪むため、バッキングからリードまで存在感のあるギターサウンドでハードロックからメタルまで対応することができます。
MXR Distortion+
1975年に発売された「MXR Distortion+」は、ディストーションエフェクターとして最初に世の中に登場し、ディストーションという名を世に広めた歴史的エフェクターです。
甘いオーバードライブサウンドはもちろん、粒が荒くファズのようなトーンが特徴で、Roland JC-120などクリーンなトランジスタアンプにつないでもハイゲインサウンドを出力することができます。
つまみは2つというシンプルな操作系統ながら広範囲に渡る歪みサウンドに対応していますので、ギター初心者でも扱いやすいペダルです。
Proco RAT2
1978年に作られ1984年に改良が施されて以降、現代でも歪みペダルの定番として高い人気を誇る「RAT(ラット)」です。
太く存在感がある荒々しい音質のディストーションサウンドが特徴ですが、クランチ程度の歪みにセッティングしたクランチサウンドでかき鳴らす系のギターサウンドとも相性が抜群です。
また、FILTERつまみの操作によってファズのように荒々しいサウンドも作ることができますので、幅広い使い方ができるディストーションペダルです。
Sobbat DB-1 DRIVE BREAKER
京都発ハンドメイドエフェクターのソバットのディストーションです。
非常に太く強力なサスティーンを持った個性的なディストーションでありながら、ワイドEQの採用によって音の輪郭を失うことなく幅広い音作りに対応できます。
そのため、ハイテクなソロから押し出しの強いリフワークまで幅広いプレイスタイルに対応できます。
Leqtique 11/11
国産ハンドメイドエフェクターブランドのLeqtiqueによる2018年10月に登場したモダンハイゲインディストーションペダルです。
厳選したパーツを採用しながらも比較的リーズナブルな価格帯に収まっており、シンプルな3つまみの操作によって深く歪みながらもローノイズでクリアなサウンドが特徴です。
また、ハイゲインディストーションとしてこれまで「9/9」「10/10」をリリースしていずれも人気を集めていますが、高い品質やサウンドデザインはそのままに小型化・大量生産を可能にした「L'(エル)シリーズ」である「L' 10/10」「L' 9/9」も注目です。
SUHR Riot Distortion
ハイエンドギターブランドのSuhr Guitarsがリリースされたモダンハイファイサウンドが特徴のディストーションペダルです。
メーカーが「大出力スタックアンプをフルアップしたときのような歪み」と謳うように、深く歪ませてもアタック感を損なわずきめ細やかな歪みで真空管アンプの歪みのような奥行き感が特徴です。
また、中央に3段階のスイッチにより3種類の異なった歪みが得られる仕様になっており、ハムバッカーやシングルコイルを問わずどんなギターにでも相性はよく合います。
2009年に発売でディストーションの中では割と後発組のエフェクターではありますが、実力が認められて今では最強ディストーションと言われることも多いぐらい定番エフェクターのひとつになりました。
まとめ
ギターエフェクターのディストーションのおすすめについてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
ディストーションは3種類の歪み系エフェクターのなかでも使いやすくメインの歪みとして使用されることが多いエフェクターの一つでもあり、ギタリストなら1台は持っているエフェクターカテゴリーでもあります。
是非、自分の求めているサウンドを実現できるディストーションペダルを見つけていきましょう。
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