アンプライクで自然な歪みを得られるオーバードライブは、歪み系エフェクターとして分類されるエフェクターです。
現代では技術の発達により様々なメーカーから多種多様な特徴や機能を持つエフェクターが販売されているため、選択肢が広く自分の求めている理想のサウンドはあるものの選び方に悩むことも多いかと思います。
そこで今回は、ギターエフェクターのオーバードライブの使い方について解説していき、おすすめの人気機種や定番機種などを厳選してご紹介していきます。
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目次
ギターエフェクターのオーバードライブとは
ギターの「オーバードライブ(overdrive)」とは、ギターアンプのボリュームを上げすぎた時に音が自然と歪んでいく現象を意図的にシミュレーションしたエフェクターを意味します。
音を増幅させるアンプ回路内部で過大増幅に陥った際に回路性能の限界で飽和し、出力音が歪んでしまう原理をクリッピング回路という仕組みで再現しています。
ディストーションも同様の原理を利用しているため、現代においてはオーバードライブとディストーションの違いは明確ではありませんが、アンプライクで自然な歪みをオーバードライブと呼ばれるのに対し、やや粗い深い歪みをディストーションと呼ばれる傾向にあります。
ギターアンプが自然に歪んだような綺麗な歪みであるオーバードライブは、コードの分離感がよくピッキングに素直に反応してくれるなどニュアンスが伝わりやすいのが特徴です。
ギターエフェクターのオーバードライブの接続順
ギターエフェクターのオーバードライブをつなぐ順番は、コンプレッサーなどのダイナミクス系エフェクターの後段、コーラスなどモジュレーション系エフェクターの前段になるような位置に配置するのが一般的です。
また、ゲインブースターとして使用する場合はメインの歪みエフェクターの前段、ボリュームブースターとして使用する場合はメインの歪みエフェクターの後段につなげます。
もし、ワウペダルなどフィルター系エフェクターを併用する場合は、インピーダンスの関係によりワウペダルの後段にオーバードライブをつなげます。
ギターエフェクターのオーバードライブの設定方法
オーバードライブは機種によってはつまみがたくさんある場合もありますが、基本的な設定は「LEVEL・TONE・GAIN」の3つでコントロールします。
オーバードライブの「LEVEL(レベル)」つまみ
オーバードライブの「LEVEL(レベル)」は音量を調節をするためのつまみです。
また、「volume(ボリューム)」と表記されている場合もあります。
つまみを右に回せば音量が上がり、左に回せば音量が下がります。
オーバードライブの「TONE(トーン)」つまみ
オーバードライブの「TONE(トーン)」は音色を調整をするためのつまみです。
TONEは基本的に「ローパスフィルター」の役割になっており、つまみを右に回せば音が明るく鋭い音になり、左に回せば音が暗く丸みのある音になります。
また、音色を調整をするためのつまみが「TREBLE(トレブル)/MIDDLE(ミドル)/BASS(ベース)」と分かれている場合もあります。
基本的には「TREBLE(トレブル)」は高音域、「MIDDLE(ミドル)」は中音域、「BASS(ベース)」は低音域の役割となっています。
各つまみを右に回せば特定の周波数帯をブースト、左に回せば特定の周波数帯をカットすることができますので、より繊細な音作りができます。
オーバードライブの「GAIN(ゲイン)」つまみ
ディストーションの「GAIN(ゲイン)」は歪み具合を調節をするためのつまみです。
また、「Drive(ドライブ)」や「Boost(ブースト)」と表記されている場合もあります。
つまみを右に回せば歪みの量が増し、左に回せば歪みの量が減ります。
ギターエフェクターのオーバードライブの使い方
オーバードライブは目的に合わせて幅広い使い方ができるエフェクターです。
ギタリストによってオーバードライブの使い方は様々ですが、代表的なオーバードライブの使い方をご紹介していきます。
オーバードライブをメインの歪みとして使用する使い方
オーバードライブをメインの歪みとして単体で使用する使い方です。
クランチサウンドからディストーションのように激しく歪むオーバードライブサウンドまで機種によって歪みの量は異なりますが、オーバードライブで音作りをして常にかけっぱなしにしておきます。
バッキングギターにおけるコードストローク、カッティング、アルペジオはもちろん、リードギターに至るまで幅広く使用することができます。
オーバードライブをゲインブースターとして使用する使い方
オーバードライブをゲインブースターとして使用する使い方の場合は、オーバードライブのつなぎ方をメインの歪みエフェクターの前段になるようにセッティングしておきます。
オーバードライブの設定はドライブをクランチ気味にしてボリュームを上げることでギターの信号を増幅させることができ、メインの歪みに送るゲインを上げることで歪みの量を増やすことができます。
ギターの出力が弱い場合に音痩せ対策や、クランチ気味に音作りしたアンプやメインの歪みエフェクターのゲインを稼ぎたいときによく使われます。
オーバードライブをボリュームブースターとして使用する使い方
オーバードライブをボリュームブースターとして使用する使い方の場合は、オーバードライブのつなぎぎ方をメインの歪みエフェクターの後段になるようにセッティングしておきます。
オーバードライブの設定はドライブを控えめにして求めているボリュームになるまで上げることで音量を増幅させることができ、メインの歪みの音量を上げることができます。
アンプやメインの歪みエフェクターの音作りを活かしたまま音量を稼いでギターソロなど音を前に出したいときによく使われます。
オーバードライブを音質補正として使用する使い方
オーバードライブをアンプや歪みエフェクターの音質補正として使用する使い方です。
つなぎ方の順番をメインの歪みの前段と後段のどちらにするかで得られる効果は変わりますが、トレブルブーストであれば高音域、ミッドブーストであれば中音域、ローブーストであれば低音域を持ち上げることができます。
また、プリアンプ系のエフェクターでドライブサウンドのキャラクターを変える場合などもあります。
ギターエフェクターのオーバードライブの系統
オーバードライブは歪みのタイプや音の傾向によっていくつか種類があります。
歪みサウンドの傾向が通ったもの、またはモデリングされた元の代表となるエフェクターや機材の名前で「〇〇系」と呼ばれており、有名な「〇〇系」エフェクターの特徴をご紹介していきます。
TS系/チューブスクリーマー系のオーバードライブ
TS系とは、IbanezのチューブスクリーマーのTSシリーズをモデリング、またはチューブスクリーマーにインスパイアされた歪みエフェクターのことです。
TS系のサウンドの特徴は中音域にあり、ギターサウンドの一番心地よい帯域である中音域を持ち上げ、低音や高音をカットすることで音抜けもよくなる傾向にあります。
歪みの量は少ないですが、ギターの聞き取りやすい音域を前に出してくれる特徴を活かし、ブースターとしてアンプや他のエフェクター等の他の歪みと組み合わせて使用されることが多いです。
ケンタウロス系のオーバードライブ
ケンタウロス系とは、すでに生産終了となったオリジナルのケンタウロスという歪みエフェクターのサウンドを忠実に再現した歪みエフェクターのことです。
ケンタウロス系のサウンドの特徴は広いダイナミクスレンジと音の太さにあり、単にローミッドを持ち上げたような太さではなく、同時に非常に抜けるサウンドを生み出すことが可能となっています。
ハリや煌びやかさを感じさせるサウンドを活かし、クリーンブースターとして使用されることの多い歪みエフェクターです。
ダンブル系のオーバードライブ
ダンブル系とは、世界中のギタリストが憧れる伝説的アンプでもある「ダンブルアンプ」を再現しようと生み出された歪みエフェクターのことです。
ダンブル系のサウンドの特徴はレスポンスの速さと音抜けの良さにあり、聞き取り安い中高音域が程よく強調されているため、歪ませてもクリーンな部分が消えずに音抜けの良いサウンドになる傾向にあります。
広いダイナミクスレンジでピッキングニュアンスがアンプにダイレクトに伝わりやすいため、シンプルな使い方をされることが多い歪みエフェクターです。
マーシャル系のオーバードライブ
マーシャル系とは、その名の通りマーシャルアンプの音をエフェクターで再現した歪みエフェクターのことです。
また、マーシャル製アンプのサウンドを模した年代やモデルなどにより「プレキシ系」や「ブラウン系」とも呼ばれています。
マーシャル系のサウンドの特徴は中高域の主張が強いエッジのあるサウンドにあり、一貫して歪みが粗くジャキジャキしたサウンドの傾向にあります。
歪の量は多くメタルやハードロックなど王道のロックサウンドを求める場合のメインで使用する歪みエフェクターとして使われることが多いです。
フェンダー系のオーバードライブ
フェンダー系とは、フェンダーのアンプで有名な「Tweed(ツイード)」や「Black Face(ブラックフェイス)」などの代表的モデルのアンプサウンドの傾向を再現した歪みエフェクターです。
フェンダー系のサウンドの特徴は艷やかなクリーンにあり、ボリュームを上げた時に得られるジャリっとした粗くダーティーなオーバードライブサウンドになる傾向にあります。
多くはクランチからオーバードライブ程度の歪みが中心で、コードの分離感やドライブさせたときの絶妙なコンプ感を求めるときに使われることが多いです。
トランスペアレント系のオーバードライブ
トランスペアレント系とは、味付けの少ないオーバードライブというカテゴリで「トランスペアレント(透明)」と名付けられている歪みエフェクターのことです。
トランスペアレント系のサウンドの特徴は低音から高音にかけてダイナミックレンジが広く、ピッキングに対するレスポンスの良さや、ギターのボリュームとの親和性、追従性に優れる傾向にあります。
アンプで音作りをしつつサウンドキャラクターを損ねずクリーンからクランチサウンドを求めるときに使われることが多いです。
ギターエフェクターのオーバードライブのおすすめ
ギターエフェクターのオーバードライブのなかでもおすすめの人気機種や定番機種、名機などを厳選してご紹介していきます。
BOSS OD-3 OverDrive
オーバードライブの元祖でもあり名機OD-1の後継機でもある超定番のオーバードライブペダルです。
増幅回路とダイオード・クリッパー回路を組み合わせたデュアルステージオーバードライブ回路と採用しており、自然なコンプレッション感と伸びやかなサステインを両立させています。
また、きらびやかな高域から図太い低域までワイドな周波数特性があり、太く甘い低音のリフや歯切れの良いカッティング、粘りのあるサスティーンと太い低音の滑らかなリードサウンドなど幅広い音作りが可能です。
正統派なドライブサウンドが特徴でもあり、クセの少ない歪みはジャンル問わず使いやすいのが人気の理由の一つです。
BOSS BD-2 Blues Driver
登場してから現在まで爆発的人気を誇る定番のオーバードライブペダルです。
真空管アンプで用いられる多段クリッピング回路設計を採用したアンプライクな回路設計になっており、ギターの入力レベルやピッキングニュアンスに対する絶妙なレスポンスを備えています。
また、可変域の広いゲインコントロールによりクランチからディストーションまで幅広い音作りができるのはもちろん、ギターのボリュームを絞ることで軽やかなクリーンサウンドを得られるなどギターボリュームに対する反応もナチュラルです。
ブルースギターのクランチなドライブサンドからハードロックの歪みまで多彩に使えるオーバードライブペダルでもあり、アマチュアやプロ問わず絶大な支持を集めているモデルです。
FULLTONE OCD OBSESSIVE COMPULSIVE DRIVE
フルトーンのオーバードライブの決定版ともいえる定番オーバードライブペダルです。
Roland Jazz Chorus JC-120などのソリッドステートアンプ(またはトランジスタアンプ)との相性が抜群で、クラスAアンプが本来持ち合わせているきらびやかな響きと豊富なオーバートーンを引き出す優れ物です。
ダイナミックレンジが広くピッキングに対する反応も良く、ギターのボリュームコントロールを絞ったクリーントーンでも高い解像度を保ってくれるため、幅広いトーンを引き出すことができます。
モダンなサウンドで厚みのある濃厚な歪みや低音域はかなりの音圧があり、ストラトキャスターやテレキャスターなどシングルコイルピックアップとも相性が良いという評判も人気の理由の一つです。
FULLTONE FullDrive 2
発売してから20年以上経ってもなお売れ続けているFulltoneの定番オーバードライブであるOCDと並ぶ超ロングセラーのTS系オーバードライブペダルです。
コントロール部中央に3段階のサウンドモード切り替えスイッチを搭載しており、コンプレッション感のないクリーンブーストからナチュラルなドライブサウンド、中音域が豊かなドライブサウンドなど様々な音作りが可能になっています。
また、「歪み+ブースト」という2つのペダルを一つにしたエフェクターの元祖ともいえるペダルでもあり、Boostモードでは独立したゲインコントロールによりさらに濃厚な歪みを得ることが可能です。
単体でも十分なサウンドメイクができますが、真空管アンプや他のエフェクターなどのブースターとして使う事で真価を発揮するペダルでもあります。
Ibanez TS9 Tube Screamer
数あるオーバードライブの中でも特に人気の高いTS系のオーバードライブペダルです。
TS9単体ではそこまで深い歪みは得られませんが、ピッキングの反応性の良さが生む粘りのあるドライブサウンドに加えて、ギターの美味しい中音域を持ち上げてくれるサウンドが魅力です。
アンプやエフェクターで音作りをしておき、「音抜けの良いリードサウンドを作りたい」ときのブースターとして使用する使い方が定番になっているエフェクターです。
無駄な低音がカットされるので、「切れのあるリフを刻みたい」ときに使うと良いでしょう!
Ibanez TS808
一番最初に発売され既に廃盤となり伝説的なエフェクターとなった「TUBE SCREAMER Overdrive Pro TS808」の復刻モデルです。
粘りある中音域と激し過ぎない柔らかな歪みが特徴であり、エレキギターのサウンドの一番美味しい帯域である中音域を持ち上げてくれるため、音抜けがよくなるとされています。
このペダルを最大限生かすためにはメインの歪みで音作りをしたうえで、その音をブーストさせる用途で使うのがおすすめです。
まとめ
ギターエフェクターのオーバードライブのおすすめについてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
オーバードライブはメインの歪みエフェクターとしてだけでなく、ブースターとしても使用されることも多い歪みエフェクターでもあり、ギタリストが1台は持っているカテゴリーでもあります。
是非、自分の求めているサウンドを実現できるオーバードライブを見つけていきましょう。
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