ギターをパーカッションのような音を出しながら演奏するスタイルはかっこいいですよね。
主にアコースティックギター(アコギ)で使われる奏法で、一人で演奏しているとは思えないほどの多様な音を生み出すので、初心者はどうやって音を出したら良いかわからず難しいと思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回はスラム奏法のやり方やコツ、練習フレーズなどを解説していき、スラム奏法がうまくできない時に陥りやすい症状などの注意点をまとめました。
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目次
ギターのスラム奏法とは
ギターのスラム奏法とは、ギターをパーカッションのように叩いてパーカッシブな音を奏でる演奏方法です。
スラム奏法の名前の由来は、叩きつけるという意味の英語である「SLAM(スラム)」からきており、一人で演奏しているとは思えないほどの多様な音を生み出すことができます。
スラム奏法の歴史としては、スラム奏法の生みの親は海外の「ペッテリ・サリオラ」と言われており、日本ではソロギタリストの押尾コータローがスラム奏法を楽曲に取り入れていることで有名です。
また、アーティストとしてはロックミュージシャンの「雅-miyavi-」やシンガーソングライターの「大石昌良(おおいし まさよし)」、YouTube(ユーチューブ)では「瀧澤克成」や「いのけん」が有名です。
ギターのスラム奏法のやり方
ギターのスラム奏法はストロークでコードやメロディーを弾きながら「バスドラム・スネアドラム・ハイハット」のドラム3点を組み合わせるのが基本です。
バスドラム/パーム
バスドラムのやり方です。
パームと呼ばれるテクニックで、右手の手首に近い手のひらでサウンドホールの上あたりを押すように叩いて「ドスッ」「ドンッ」など出す低い打音です。
右手の手首が山を描くようにボディから浮かせて、肩から肘、腕、指先まで力を抜いて構え、右手の手首が谷を描くように手首でサウンドホールを叩きます。
肘を軸にするのではなく手首の動きで叩くのがコツで、手首で叩くというよりは手首の重みを落とすような感覚です。
スネアドラム/スラム
スネアドラムのやり方です。
スラムと呼ばれるテクニックで、ギターのボディを叩いて「パンッ」など甲高い打音です。
ギターからなるべく右手の指先を離すようにしておき、手首のスナップを効かせて指版の端あたりを目掛けて中指と薬指で素早く叩くようにします。
ハイハット/ゴーストノート
ハイハットのやり方です。
ゴーストノートと呼ばれるテクニックで、ギターの弦を叩いてフレットに打ち付けられたときに「チャッ」という音を鳴らす打音です。
人差指で弦をミュートした状態から中指や薬指(または2本で)で弦を叩くようにしますが、左手タッピングでゴーストノートをだすときは、指の力よりも指を振り下ろすときのスピードがコツです。
フィンガーストローク
フィンガーストロークのやり方です。
弦を弾くときにデコピンするときのような感覚で中指と薬指を広げ、中指と薬指の爪でダウンストロークをしていきます。
中指と薬指の腹が弦に対して斜めに当てるようにように構えて、低音弦側に向かうように中指と薬指を手のひらの内側に払うようにアップストロークをします。
ギターのスラム奏法でよく使われるテクニック
その他にもスラム奏法では様々な演奏方法が使われております。
レフトハンド奏法
レフトハンド奏法は、左手だけで音を出す奏法です。
左手でハンマリングやプリングのような動作を行い、1音ずつを狙って音を出す場合や複数の弦を狙って音を出す場合があります。
また、弦を押さえていた左手の指を、低音弦から高音弦に向かって「なで下ろす」ように移動させて弦を弾くストロークもあります。
ライトハンド奏法
ライトハンド奏法は、右手だけで音を出す奏法です。
右手でタッピングのようなを行い、1音ずつを狙って音を出す場合や複数の弦を狙って音を出す場合があります。
また、右手で弦を叩いてそのまま押さえずに離すことで、通常のピッキングやストロークの代用としても使われます。
ラスゲアード奏法
ラスゲアードは、ストロークをするときに右手の小指から人差し指まで少しだけ時間差をつけて順番に弾き下ろす奏法です。
フラメンコ奏法の一種で「ジャラーン」という音色が特徴です。
ネイルアタック
ネイルアタックは、右手の中指や薬指の爪側を弦にぶつけるテクニックで、しっかりと音をだすというよりも、パーカッシブな「チャッ」という音を鳴らします。
右手はダウンストロークの動きに近いですが、ギターの表版に対して垂直に叩くのではなく、どちらかというと表版に対して平行に動かすのがコツです。
また、指を伸ばすのではなく曲げた形のままデコピンの要領で弦を爪側に当てるイメージで、ネイルアタックと同時に伸ばした小指を支えとしてボディに当てます。
ストリングスヒット
ストリングスヒットは、右手の指先(または親指)で弦を叩き、弦とフレットに当てて「チャッ」という音を鳴らす奏法です。
スラムのテクニックの代わりにスネアドラムの代用としても使われます。
アルペジオ奏法
アルペジオ奏法はコードなどの和音を分散して弾く奏法です。
また、クイックアルペジオで2音以上の音をピッキングするときに、少しだけ時間差をつけて「シャラーン」という音を弾く奏法もあります。
アルペジオ奏法にネイルアタックやストリングスヒットなどを組み合わせることで、リズミカルな演奏になります。
ハーモニクス奏法
ハーモニクス奏法は独特な澄んだ綺麗な音(倍音)が得られる奏法です。
ハーモニクスは「ナチュラルハーモニクス」「テクニカルハーモニクス(人口ハーモニクス)」「タッピングハーモニクス」があります。
特にハーモニクスポイントを右手で叩くタッピングハーモニクスはスラム奏法と相性がいいため、様々なフレーズで使われています。
ボディヒット
ボディヒットは、ギターのボディを叩いて打音を出すテクニックです。
サウンドホールの上側で親指で叩くこともあれば、ギタリストによっては指先叩いたり、サウンドホールの下側で指の爪側で「右手小指→薬指→中指→人差し指」の順でギターのボディにあてるなど様々です。
また、ギターを叩く位置によっては得られる打音の音色が変わるので、曲調に合わせて変えていきます。
ギターのスラム奏法の練習フレーズ
ギターのスラム奏法の練習フレーズを教則本などにも掲載されているような簡単なパターンでいくつかご用意しました。
楽譜やTAB譜(タブ譜)上では様々な記号が使用されていますが、教本によって記載方法が様々なので教本をみるときは音源と合わせて確認していくことをおすすめします。
練習フレーズ1:8ビートの基礎練習
まず基本の8ビートのリズムパターンで弾く基礎練習です。
コード進行は「C→G→Am→Em」で左手は簡単ですが、右手は1拍目と3拍目はダウンストロークと同時にパームでバスドラムを鳴らし、2泊目と4拍目はスラムでスネアドラムを鳴らします。
スラム奏法の初級におすすめのフレーズですが、単純なフレーズでも最初は難しいかもしれまので、スラム奏法に慣れるまではゆっくりしたテンポから始めましょう。
練習フレーズ2:16ビートの基礎練習
次に基本の16ビートのリズムパターンで弾く基礎練習です。
コード進行は「C→G→Am→Em」で左手は簡単ですが、右手は
- ダウンストロークと同時にパームでバスドラムを鳴らす
- ダウンストローク
- アップストローク
- スラムでスネアドラムを鳴らす
- アップストローク
- ダウンストローク
- アップストローク
という順番になります。
スラム奏法の初級におすすめのフレーズですが、単純なフレーズでも最初は難しいかもしれまので、スラム奏法に慣れるまではゆっくりしたテンポから始めましょう。
ギターのスラム奏法がうまくできない時に見直すポイント
ギターのスラム奏法が上手くできない時に見直すポイントをいくつかまとめました。
スラム奏法で演奏していると痛い
スラム奏法で演奏していると痛い場合は、力が入りすぎていることがほとんどです。
フォームがしっかりしていれば力はほとんど必要ないので、上手く鳴らないからと力まかせにするのではなく、フォームを再確認したり、良い音が出るポイントを模索することが大切です。
ギターを叩いていると壊れるか心配
最初はスラム奏法でギターを叩いていると壊れるか心配になることはあるかと思います。
もちろん、力まかせにギターを叩いてしまうと物理的に壊れてしまいますが、スラム奏法を普通に演奏する分には壊れる心配はありません。
録音などの機材をどうすれば良いかわからない
エレアコなどではピエゾ・ピックアップが付いているので弦の振動は拾うことができますが、パーカッシブなボディの音を拾うことができません。
アコースティックギターへ取り付けるピックアップは
- マグネティックピックアップ
- ピエゾピックアップ(アンダーサドル)
- ピエゾピックアップ(コンタクトタイプ)
- コンデンサーマイク
などがありますが、ボディヒットの音を録音する場合は「コンデンサーマイク+マグネティックピックアップ」や「マグネティックピックアップ+ピエゾピックアップ(コンタクトタイプ)」など複数のピックアップを組み合わせるのがおすすめです。
まとめ
ギターのスラム奏法のやり方についてを解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
ギターでスラム奏法ができるようになると、ただの弾き語りにリズムが加わるだけでも楽曲の印象が劇的に変わりますし、今後もアイデア次第で発展していく可能性がある奏法です。
この機会にぜひスラム奏法にチャレンジしてください。
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