ギターのネックのスケールとは、「大きさ・サイズ」を示す指標でネックの長さ、具体的にはナットからサドルまでをスケールと言います。
全長(ギターのボディ端からネック端)は、カタログやスペック表において記載されないことも多いですが、ギターのネックのスケールが記載されないことはありません。
ギターにとって重要な指標ですが、今回はギターのネックのスケールの種類とネックのスケールの長さによる音の違いについてまとめました。
(ここで取り扱う「スケール」は、音階理論の「スケール」とは異なります)
目次
ギターのネックのスケールとは
ギターのスケールとは、カタログやスペック表では英語で「Scale Length」と表記されることは多く「ナットからサドルまで」、つまり「演奏で使用される弦の長さ」を表します。
時にナットから12フレットまでの長さで表す場合もあり、その場合はナットからサドルのちょうど半分になります。
(インチ表示、ミリ表示の誤差で半分にならないケースを除きます。)
ギターのネックのスケールの測り方
ギターメーカーごとにスケール表記が2通りありますが、いずれの場合も同じスケールで表記が異なるだけです。
一般的に表記されているギターのネックのスケールは「ナットからサドルまでの長さ」を測っておりますが、ギターのネックのスケール表記方法にはもう1つ「ナットから12Fまでの長さ」を測っている場合があります。
後者の場合は、ギターのネックのスケールは「ナットから12Fまでの長さ」と「12Fからサドルまでの長さ」は同じ長さなので、実は「ナットからサドルまでの長さ」の丁度半分の長さです。
(もちろん、「ナットから12Fまでの長さ」と「12Fからサドルまでの長さ」は同じ長さが同じになるように、オクターブピッチ調整(オクターブチューニング)をするのが前提です。)
そのため、ギターメーカーごとにスケール表記が「648m」や「324mm」というように違っている場合がありますが、これは両方とも同じスケールだということになります。
ギターのネックのスケールの種類
ギターのネックのスケールの種類は、ロング(レギュラー)、ミディアム、ショートの3種類があります。
ギターのネックのスケールの種類
- ロングスケール(レギュラースケール)
- ミディアムスケール
- ショートスケール
ロングスケール(レギュラースケール)
ギターのナットからサドルまでの長さが648m(ナットから12フレットまで324mm)です。(インチ表示の場合、「25.5inch」や「25-1/2」です。※1インチ≒2.54mm)
また、ロングスケールはレギュラースケールとも呼ばれ、多くのフェンダーのギターが採用したことからフェンダースケールとも呼ばれます。
他のスケールよりもテンション(弦の張りの強さ)が強めで、チューニングは安定する傾向です。
ミディアムスケール
ギターのナットからサドルまでの長さが628mm(ナットから12フレットまで314mm)です。(インチ表示の場合、「24.75inch」または「24-3/4」です。※1インチ≒2.54mm)
ギブソンのギターの大半がこのスケールであるため、ギブソンスケールと呼ばれることもあります。
ロングスケール対比で、若干テンションが弱くなる傾向がありますが、ギブソンはテンション対策として、ヘッドに角度をつけて、テンションを稼いでいるため、デメリットになるような弱さではありません。
ヘッドに角度がないミディアムスケールは、テンションがかなり緩くなりますが、ヘッド角度がフラットなミディアムスケールのギターはあまり存在しません。
ショートスケール
ナットからサドルまで609mmスケール(ナットから12フレットまで305mmスケール、この場合、305の倍数が610となってしまいますが、インチ表示とミリ表示の誤差が原因)です。(インチ表示の場合「24inch」です。)
ショートスケールを採用したギターとしては、フェンダーのムスタングやジャガーがあります。
当初「スチューデントモデル(子供用)」として開発されたムスタングにはぴったりのサイズのスケールだったと考えられますが、ショートスケールのギターはそれほど販売されていません。
理由としては、他のスケール対比で、テンションが弱く、チューニングの安定性に劣ること、ショートスケールネックは外観上の認識できるレベルで短く、デザイン面と演奏面(ハイフレットポジションにおける窮屈感)の両面で敬遠されるためです。
その他のスケール
ロングスケール(レギュラースケール)とミディアムスケールのちょうど中間にあたる638mmのミディアムロングスケールをポールリードスミスが採用しています。
さらに666mmのエクストラロングスケール、1弦側よりも6弦側の弦長が長いファンフレットと呼ばれるイレギュラーなスケールもありますが、極めて稀です。
これらのギターは、一般のギターが対象とする音域よりも低い音程も鳴らすことを目的に製作された特殊なギターで、7弦などの設定もあります。
その他のネックスケール
- マルチスケール:25インチ〜26-3/4インチ or 635mm〜679.45mm
- エクストラロングスケール:26-1/2インチ or 673.5mm
- バリトンスケール:27インチ〜30インチ or 685.8mm〜762mm
- Paul Reed Smith Guitars:25インチ or 635mm
ギターのネックのスケールの長さの違いによる特徴
ギターのネックのスケールの長さにより、音色や演奏性に与える影響はそれぞれ違いがあります。
弦のテンション
ネックのスケールが長ければ「テンションは高く」なり、テンションが高い分「ハリのある硬めの音色」になります。
逆にネックのスケールが短ければ「テンションが低く」なり、テンションが低い分「ハリの弱い柔らかい音色」になります。
音程(ピッチ)
ネックのスケールが長ければ「弦のテンションが高い」ので、弦を押さえた時に音程(ピッチ)がシャープしにくく安定しやすいです。
逆に、ネックのスケールが短ければ「弦のテンションが低い」ので、弦の張りが柔らかくなることで弦を押さえた時に音程(ピッチ)がシャープしやすく、ロングスケールのギターに比べて音程(ピッチ)の安定性は弱くなります。
弦を押さえた時の硬さ
ネックのスケールが長ければ「弦のテンションが高く」なるので、弦を押さえるときはテンションが高い分、より強い力が必要になります。
ネックのスケールが短ければ「弦のテンションが低く」なるので、弦を押さえるときはテンションが低い分、より柔らかく感じます。
フレット間隔による演奏性
ネックのスケールが長ければ「フレットの間隔が広く」なり、ネックのスケールが短くなれば「フレットの間隔が狭く」なるため、フレット感覚が異なることで演奏性(弾きやすさ)に違いが出ます。
指が太い人の場合、ネックのスケールが短く「フレットの感覚が狭く」なることで、ハイポジションで演奏するときに窮屈に感じることが多くなるかと思います。
逆に、指が細い人は、ネックのスケールが短く「フレットの感覚が狭く」ても、ハイポジションの窮屈さは感じにくいことが多いかと思います。
また、手が小さい人はネックのスケールが長くなることでフレットの感覚が広くなり、弦を押さえにくいなどの場合も出てきます。
まとめ
ギターのネックのスケールについてまとめてきましが、いかがだったでしょうか。
ネックのスケールでは「ロングスケール」と「ミディアムスケール」の差異を感じないプレイヤーも数多くいますが、その差異を重要視してこだわるプレイヤーもいます。
特にロングスケールとミディアムスケールを併用する場合、弦の太さを変えてテンションを均一にする工夫(例:フェンダーは細め、ギブソンは太め)をしているプレイヤーもいます。
しかし、ミディアムスケールのみを弾き続けたプレイヤーが、初めてロングケールに切り替える場合、慣れるために要す時間は相当かかる場合もあります。
ギターのネックのスケールは演奏や音にも影響を与える重要なパーツなので、自分にピッタリのものをえらびましょう。