現在、スライドバーは、様々な素材で製造されており、素材・形状・大きさ・重量も選べるようになっています。
そのため、今回はスライドバーの素材と形状・大きさ・重量による特徴や選び方についてまとめました。
目次
ギターのスライドバーとは
スライド奏法は、米国のネイティブミュージックに根差したブルースやカントリーミュージック、ハワイアンで多用される奏法です。
そしてスライドバーは、スライド奏法に使用されるギターのネック上を滑らせる棒状の道具です。
当初は、アコースティックギターによるブルースにおける奏法でしたが、ブルースがエレクトリック化する過程で、スライド奏法は広くロック全般で用いられるようになりました。
現在では、その印象的な音や音程ニュアンスを利用して、ポップミュージック等も含めてジャンルに関係なく使用されるようになりました。
スライドバーは、もともと、バーボンウイスキーの瓶の首の部分を切り取って作られていたため、ボトルネック奏法とも呼ばれます。
ギターのスライドバーの素材
ボトルネック奏法と呼ばれるぐらいですので、ガラス製が代表的です。
また、ハワイアンで使用されるラップスティールギターでは、スチール製が標準です。
現在は、幅広いトーンニュアンスや使い心地を求めて、多様な素材と形状で製造・販売されているため、選ぶポイントは「素材による音の違い」と「弦の上を滑らせた時の感触」の違いです。
この2点はともに「良し悪し」はなく「好み」による選択ですが、両立しない場合も多く、「音はスチール製が好きだけど、感触はガラスが好き、その結果、感触を優先してガラスを使用している。」ということもあります。
ガラス製のスライドバー
ガラス製のスライドバーは「ボトルネック奏法」の名称とのとおり、代表格です。
音・感触ともにこれが基準となると思われますが、スチール製と比べた場合、音は丸みがあって、やわらかい印象で、サスティンはやや短くなりますが、そのサスティンの短さである「音の消え際」が美しいとの評価もあります。
重量面では軽く、摩擦の感じ方は個人差がありますが弦の摩擦が適度にあり、滑り過ぎない意味でビギナーは音程をキープしやすいとの定評があります。
一方でスチール製よりも耐久性に劣り、特に評価の高い本物のボトルの首を切って作られたスライドバーは落とすと割れてしまう可能性が高くなります。
ただし、量産されているガラス製のスライドバーはほとんどが強化ガラスであるため、それほど割れません。
スチール製(ステンレスを含む)のスライドバー
スチール製のスライドバー銀色の金属製のものが大半ですが、金色のものもありますので、「銀色=スチール」、「金色=ブラス」ではありませんので、注意が必要です。
スチール製は明るいブライトな音でシャープな印象で、サスティンはガラス製より長く、他の素材も含めてスチール製の優位点です。
ハワイアンミュージックの伸びやかなフレーズは、ラップスティールギターとスチールスライドバーの組み合わせによるもので、スチール表面はツルツルで、弦とスライドバーのとの摩擦が少なく、スピーディーなスライドプレーに有利です。
また、耐久性に優れ、破損することは、ほとんどありません。
ブラス製のスライドバー
ブラス製のスライドバーはくすんだ金色で、テレキャスターなどエレキギターのサドルにも使用されている耐久性の高い素材です。
スチールと同様に金属類ですが、音と使用感には違いがあり、スチール製よりもくすんだ音色となり、外観と同様に渋みのあるキャラクターとなります。
ガラス製の音のような丸みはなく、スチール製のブライト感を減らした印象で、ガラスとスチールの中間のイメージと感じられます。
弦との摩擦については、スチールに比べると、ブラス表面のザラツキ感がそのまま使用感になるため、滑りはガラス並み、タッチはガラスよりも硬めとなります。
また、重量は重く、慣れを要します。
陶器製(セラミック)のスライドバー
陶器製(セラミック)のスライドバーはガラス並みに軽くて扱いやすく、音も良いとの評価から注目されはじめ、徐々に人気が出てきています。
音については、薄いバーの場合、軽やかな印象で、厚いバーの場合は、甘い、優しい丸い音となり、音も使用感もガラスに近いですが、より上品な印象となるようです。
ただし、高価(ガラス品の4~5倍程度、またはそれ以上)であるため、愛用者は多くはありません。
ギターのスライドバーの形状
ギターのスライドバーの形状には大きく2つあり、「円筒形」と「円柱形」があります。
円筒形のスライドバー
円筒形のスライドバーは最もスタンダードなスライドバーです。
一般的には長さが7cmぐらいで、普通のギターであれば1弦から6弦までカバーすることができますが、短いものは指に装着したままでも指先が使えるようになっているものもあります。
また、太さが一定のものが一般的ですが、指板の形状に合わせてくびれているものもあります。
現在では、半円柱形のスライドバーも販売されており、スライドバーを装着したままでも、スライドバーを裏返せば、通常の演奏へ切り替えることもしやすくなっています。
円柱形のスライドバー
円柱形のスライドバーはスチールギターで使用することが多いスライドバーです。
円柱形のスライドバーには穴がないため、手にもって演奏することになり、先端が球状になっているものは、弦を1本だけ押さえるときに使います。
また、円柱形のスライドバーから発展して、現在では取っ手を付けた四角い形状のものも販売されており、手に持ちやすい形状になって素早いスライド奏法に対応しやすく工夫されています。
ギターのスライドバーの選び方
ギターのスライドバーの選び方は大きくわけて、「形状」「大きさ」「重さ」「素材」の4つがあります。
スライドバーの形状
スライド奏法では、スライドバーをネックに対し垂直に当てた状態をキープしてスライドすることが基本です。
ビギナーがこの状態をキープするためには、スライドバーの形状は細めがおすすめで、スライドバーが細いと滑らしたスライドバーをフレット上で正確に止めやすくなります。
また、スライドバーが太いと指にはめたときにぶかぶかになり、安定しづらくなります。
スライドバーの大きさ
ビギナーではスライドバーの大きさは小さいものを選ぶことがおすすめです。
理由としては、小さいとスライドバーが細い場合と同様で、スライドバーをフレット上で正確に止めやすくなります。
スライドバーの重さ
スライドバーの重さは、重量が軽い方が動かしやすいため、軽いものをおすすめします。
スライドバーはもっとも軽い部類はガラス製で20g程度、重い部類はブラス製で130g程度で、たとえ50gの差でもプレーにはそれなりに影響があります。
スライドバーの素材
スライドバーの素材は、一般的なものはガラス製のスライドバーが一般的です。
しかし、スライドバーの素材で音がかわるため、出したい音によって素材を選ぶことが大切です。
たとえば、金属系の弦楽器の音を表現をしたい場合は、「金属系(スチールなど)」の素材を選ぶとそれっぽい音がでます。
ギターのスライドバーの「形状」「重さ」の音への影響
スライドバーは、一般に音については、スライドバーの素材に関係なく、「厚く(太く)」「重いもの」が良いとされます。
厚いほど(太いほど)、音の輪郭がはっきりし、音が太くなり、より聞き取りやすい音になり、その結果、サスティンも伸びる印象になります。
ただし、どんな素材でもバーの厚さ(太さ)が2倍になれば、スライドバーは一回り大きくなり、重量も2倍になります。
厚さ(太さ)や重量が2倍になれば、スライドバーを滑らせながら、正確にフレットの真上を捉えることは難しくなります。
そんな理由から、ビギナーは細い・軽いスライドバーでフレットの真上をとらえる技術を習得して、徐々に太いバーへ移行しながら、好みの音を探ることをおすすめします。
ギターのスライドバーの代用
ギターのスライド奏法(ボトルネック奏法)をする際のスライドバーは、実は様々なもので代用することができます。
今回はその代表的な代用アイテムについて紹介します。
ライター
ライターはスライドバーの代用として代表的ではないでしょうか。
とある有名ギタリストがライブ中にライターでスライド奏法(ボトルネック奏法)をしたことがあるということも有名な話です。
空き瓶
空き瓶はガラス製のもの多いので、スライドバーの代用としてよく使われているように思われます。
ただ、空き瓶は手にもって演奏するには大きすぎるものが多いですが、個人的には「一味」や「七味」、「コショウの瓶」、「栄養ドリンク」などが大きさ的には使いやすそうです。
しかし、指が太い人は抜けないなどのアクシデントにならないように注意してください。
まとめ
スライド奏法で弾き出されたメロディやコードは、押弦による通常のギタープレーとは異なり、その存在感が際立ちます。
実際にプレーしてみるとスライド奏法で弾き出された音は、バンド演奏において音量が大きくなくても「抜けて」きます。
通常の演奏では出すことができない「始点と終点の音を途切れさせず」に「滑らかに音程を変えていくこと」で自分の個性が出せるスライド奏法を楽しんでください。