エレキギターはギターアンプで音を増幅して出力することで、初めて音が鳴ります。
1つのギターアンプでも音は各ツマミの設定によって大きく変わりますが、ギター初心者の方は「どんなツマミがあり」が「どのような役割や機能を持っているか」悩む方も多いのではないでしょうか。
今回は、リハーサルスタジオやライブハウスで定番のRoland(ローランド)のJC-120(Jazz Chorus:ジャズコ)とMarshall(マーシャル)のJCM2000の各ツマミの役割と機能、アンプの接続手順や音作りの方法についてまとめました。
ギターアンプのフロントパネルのツマミの意味と役割
ギターアンプの操作に関わるパーツやコントロールについて、フロントパネルのツマミの意味と役割の基本的な使い方をまとめました。
POWER(電源スイッチ)
POWERは主電源をオン/オフする電源スイッチです。
真空管アンプ(チューブアンプ)の場合は真空管を温めるスイッチです。
STANDBY(スタンバイ・スイッチ)
真空管アンプを使用している場合スイッチがPOWERとSTANDBYがある機種があり、POWERをONにした後STANDBYをONにする順で操作します。
POWERは電源スイッチで真空管に電流が流れ、真空管を暖めるため30秒から5分(機種によって異なる)待った後に、STANDBYを入れます。
電源を切る際は、ボリューム類を0に戻してからSTANDBY、POWERの順でOFFします。
INPUT(インプット)
INPUTはギターのジャックから繋いでいるシールドを挿入するジャックです。
機種によりHIGHインプットとLOWインプットの2つのジャックが設けられている場合があります。
HIGHインプット/LOWインプット
リハーサルスタジオやライブハウスではJC-120(Jazz Chorus:ジャズコ)が定番ギターアンプとして備え付けられている場合が多いです。
HIGHインプットとLOWインプットの特性は下記になります。
- HIGHインプット:インピーダンス(交流抵抗)が高いために出力が高い
- LOWインプット:インピーダンスが低いため、Highに比べて出力も低い
基本はHIGHインプットに接続すれば問題ありませんが、ギターのインピーダンス(抵抗値)によっては下記が推奨されています。
- ハイ・インピーダンス:抵抗値が高い(パッシブ・ピックアップの場合)→HIGHインプット
- ロー・インピーダンス:抵抗値が低い(アクティブピックアップ・プリアンプやエフェクターをつないでいる場合)→LOWインプット
アクティブピックアップは、ピックアップの稼働のために専用の電源・電池を利用するピックアップで、電源によりピックアップの機能を調節できます。
ただし、通常ハイ・インピーダンスの場合はHiGHインプットへ繋ぎますが、プリアンプ等を接続しない場合でも、音の特質からLOWインプットを好むプレーヤーもいます。
Channel(チャンネルスイッチ)
中型アンプ以上(出力で20w程度以上)の場合、2種類(または3種類)のチャンネルが設けられている機種も多数あり、概ね1チャンネルはクリーン系、もう1チャンネルは2ボリューム方式の歪系で、スイッチで選択する仕組みが主流です。
JCM2000であれば、MACTER ChanelでULTRA GAINチャンネルか、ClASSIC GAINチャンネルの切り替えができます。
また、ULTRA GAINチャンネルのOD1/OD2のスイッチは「OD1で軽い歪み・OD2でより強い歪み」、ClASSIC GAINチャンネルのClean/Crunchのスイッチは「Cleanでクリーンな音・Crunchで少し歪んだ音」を選べます。
VOLUME(ボリューム)/MASTER VOLUME(マスターボリューム)
VOLUME(ボリューム)はアンプの音量を調節しますが、歪みの濃度を調節するツマミを兼ねている場合もあります。
GAIN(ゲイン)/DRIVE(ドライブ)
GAIN(ゲイン)は歪の濃度の調節するコントールで、GAINのツマミを上げることにより、歪の濃度が増していきます。
2ボリューム方式の場合、VOLUMEを引く(PULL)とGAINに切り替わる機種もあり、中型アンプ(出力30w~50w)、大型アンプには2ボリューム方式+GAINの3ボリューム方式の機種もあります。
PRESENCE(プレゼンス)
PRESENCE(プレゼンス)は超高域の周波数を調節するツマミで、0方向で超高域カット、10方向で超高域強調となります。
一部の機種に採用されているイコライザーの一種で、音の輪郭に影響する帯域ですが、あまり強調すると耳に痛い音になる、音痩せの原因となる、など使用に注意を要します。
TREBLE(トレブル)/HIGH(ハイ)
TREBLEは高域の周波数を調節するツマミで、0方向で高域カット、10方向で高域強調となります。
ギターの音にエッジを効かせたり、音の抜けに影響する帯域ですが、協調しすぎるとキンキンしたサウンドになります。
MIDDLE(ミドル)
MIDDLEは中域の周波数を調節するツマミで、0方向で中域カット、10方向で中域強調となります。
ギターの音の抜けや丸みに影響する帯域ですが、協調しすぎるとボヤっとした感じで音の輪郭がぼやけます。
BASS(ベース)/LOW(ロー)
BASSは低域の周波数を調節するツマミで、0方向で低域カット、10方向で低域強調となります。
ギターの音の太さに影響する帯域ですが、協調しすぎるとモコっとしたサウンドになり、カットしすぎるとペラペラのサウンドになります。
TONE SHIFT(トーンシフト・スイッチ)
TONE SHIFT(トーンシフト・スイッチ)は、MIDDLE(ミドル)をカットするON/OFFするスイッチです。
TONE SHIFTスイッチを押してMIDDLE(ミドル)を下げると、中域がカットされた俗に言うドンシャリ系の音になりますが、極端に音がかわるため、基本的にはOFFにして他のイコライザーで調節することをおすすめします。
REVERB(リバーブ)
REVERBは音に残響を付加するツマミで、小さな部屋やタイル張りの風呂の中のような残響を0~10まで調節できます。
FX(F/X)
FX(エフェクト)一部の機種に採用されている機能で、上記のREVAERB以外のエコー(ディレイ)やコーラス、トレモロなどのエフェクトを付加することが出来ます。
JC-120(Jazz Chorus:ジャズコ)では、VIB(ビブラート)とCHORUS(コーラス)があり、どちらかへツマミを回すことでON(オン)の状態になります。
ギターの音に独特の揺らぎを与えてくれ、SPEED(スピードは)揺らぎのスピード、DEPTH(デプス)は揺らぎの波の深さを調節することができます。
ギターアンプのリアパネルのツマミの意味と役割
ギターアンプの操作に関わるパーツやコントロールについて、リアパネルのツマミの意味と役割の基本的な使い方をまとめました。
SEND&RETURN(センド&リターン)/FX LOOP(エフェクトループ)
SEND&RETURN(センド&リターン)はエフェクトループとも呼ばれています。
エフェクターを使用する際は繋ぎ方の順番で、エフェクターの効果、あるいは効き方が変わります。
エフェクトループを使用した場合
エレキギター
↓
アンプヘッド(プリアンプ経由)
↓
SEND(センド)
↓
エフェクター
↓
RETURN(リターン)
↓
スピーカーキャビネット(パワーアンプ)
エフェクトループを使用しない場合
エレキギター
↓
エフェクター
↓
アンプヘッド(プリアンプ経由)
↓
スピーカーキャビネット(パワーアンプ)
特にアンプヘッド(プリアンプ)で歪みの音を作っている場合、歪みの前にエフェクターがあることで、エフェクトが掛かった音を歪ませることになり、歪み方が変わります。
また、歪みの後にエフェクターがあることで、歪んだ音にエフェクトが掛かることになり、エフェクトのかかり具合が変わります。
FOOT SWICH(フットスイッチ)
FOOT SWICH(フットスイッチ)は各機能のオン/オフやアンプのチャンネルを切り替える機能を持っています。
この機能がある理由としては、コンパクトエフェクターでは足でスイッチを踏めばエフェクトのオン/オフができるに対し、アンプはに近寄って直接手で操作しなければなりません。
そこで、ラッチ型(一回踏むごとにスイッチの経路が切り替わるタイプ)のフットスイッチを使用することで、足でアンプのエフェクトのオン/オフ操作ができるようになります。
反対にアンラッチ型(踏んでいる間だけスイッチの経路が切り替わるタイプ)だと、踏み続ける必要がでてきてしまうため、アンプのフットスイッチにはラッチ型を選びましょう。
SPEAKER OUTPUTS(スピーカーアウトプット)
SPEAKER OUTPUTS(スピーカーアウトプット)は、スタックアンプ(ヘッドアンプとキャビネットスピーカーが分かれているタイプ)でヘッドアンプで作った音をスピーカーへ送るためのアウトプットジャックです。
JCM2000のスタックアンプであれば、ヘッドアンプの16Ωとキャビネットの16Ω(MONO)へ繋ぐことが通常です。
しかし、Ω(インピーダンス・電気抵抗値)の接続を間違ってしまうとアンプを壊してしまう原因になりますので、不安な場合はスタジオやライブハウスのスタッフへ必ず確認してください。
※アンプを壊すと6桁の弁償もありえます。
LINE OUT(ラインアウト)
LINE OUT(ラインアウト)は、他のギターアンプのラインインやミキサーに接続して音を出力するときに使用し、モノラルで使うときはL(MONO)に接続します。
また、レコーディングでも「LINE録り」というマイクを通さずに、直接ギターアンプの音を録音することで、マイク録りにはないクリアな音で録音したいときに使われています。
ギターアンプの使い方(接続手順)
ギターアンプの接続方法はRoland(ローランド)のJC-120(Jazz Chorus:ジャズコ)とMarshall(マーシャル)のJCM2000で少し異なります。
間違った接続手順でアンプを壊してしまわないように、接続手順をしっかりと確認してください。
MarshallのJCM2000の場合の接続手順
- アンプの電源がコンセントにつながっていることを確認する
- アンプヘッドとスピーカーキャビネットがつながっていることを確認する
- ギターのシールドをアンプのインプットへ繋げる
- アンプのボリュームが下がっていることを確認する
- パワースイッチをオンにし、真空管を30秒から5分程度温める
- 真空管を暖めたらスタンバイスイッチをオンにする
- アンプのボリュームとマスターボリュームを少しあげて音が出るか確認する
- 問題なければ音色・音量を調整
RolandのJC-120(ジャズコ)の場合の接続手順
- アンプの電源がコンセントにつながっていることを確認する
- ギターのシールドをアンプのインプットへ繋げる
- アンプのボリュームが下がっていることを確認する
- パワースイッチをオンにしアンプのボリュームを少しあげて音が出るか確認する
- 問題なければ音色・音量を調整
ギターアンプの音作り
ギターアンプのイコライザーは、一般的には0~10の目盛りのうち、5が標準的とされ、5を基準にツマミを調整します。
なお、10を標準として、マイナス方向の調整を行う方法が推奨される向きもあり、ヴィンテージアンプをモディファイした機種にその傾向があります。
いずれにしても、ギターアンプの取扱説明書には、そうした調節方法の推奨は記載なく、あくまでプレーヤーの好みで決めるものです。
エレキギターの音は引き算で考える
エレキギターの音には様々な音域が含まれていて、非常に音の帯域が広い楽器です。
そのため、不要な帯域の部分を削っていき(引き算)、必要な帯域を相対的に協調をする方法です。
Roland(ローランド)のJC-120(Jazz Chorus:ジャズコ)のイコライザーは5が基準とされているため、最初にTREBLE・MIDDLE・BASSを5に設定し、不要な部分の帯域をイコライザーで下げていきます。
例えば、もう「少し中低域を太くしたい」といった場合、シャリッとした音の部分のTREBLEを5から4、3へと下げて調整をしていくことで中低域を強調し、下がった音量をボリュームで少しあげて補い調整していくなどです。
エレキギターの音はクリーンから作る
最初からエフェクターで歪ませた音でアンプのイコライザーを調整しようとしても、なかなかうまくいかないことが多いです。
もともと歪みは、アンプの回路内で信号の過大入力を起こし、その部分が歪みとなるため、アンプで設定した音作り(イコライジング)に大きく影響されます。
そのため、まずはクリーンサウンドの土台を作って音を作ってから、音を歪ませて微調整をしていく音を作りやすいです。
エレキギターの歪みの音はGAINを徐々にあげていく
音をはじめから歪ませすぎると音に芯がなくなり、輪郭がない歪んでるだけの音になってしまいます。
上手いギタリストの音を聞くと、かなり歪んで聞こえる音でも実はそれほどGAINを上げていない場合が多く、その理由はピッキングやフレーズ弾き方がしっかりとしているから、少ない歪みでも迫力のあるサウンドになります。
丁度良い歪み具合を見つけるコツは、クリーンの状態からGAINを少しずつ上げていき、ちょうど良く感じた設定から「少しGAINを戻す」ことです。
その理由は「耳で認識できた時点で、歪みすぎてしまっているから」ですが、違う例を出すと、リバーブなども丁度良いと感じた時点では「リバーブが耳ではっきり認識できるくらい、かけすぎてしまっている」状態になっているため、「丁度良いと思ったところから少し戻す」ということを実践してみましょう。
まとめ
エレキギターの音は、エレキギターとギターアンプが基本ですが、音作りに関してはギターとエフェクターを重要視し、ギターアンプを単なるスピーカーと認識してしまう初心者の方も見かけます。
しかしながら、エフェクターで作り出す効果も限定されており、ギターアンプの特徴や個性を変えることはできませんので、ギターアンプ選びは音作りの基本であり、ギター選びと同等と言えます。
また、ギターアンプを選んだ後も大切なことは使いこなすことで、1つのギターアンプで出せる音は意外と幅があるため、歪の濃度やイコライザーのセッティングを数多く試してみることで、自分の好みのセッティングを見つけていきましょう。